COLOR KNOWLEDGE

トーストの色は?

カラーマネジメントとは何なのか? 何を解決するのか? どの様に働くのか? を説明する効果的で簡単な例として、トースターを挙げて説明します。

ある朝、あなたは朝食の準備をしにキッチンに行き、トースターにパンを入れて、ダイヤルをレベル4にセットしました。

少しすると、色づいたトーストがポンと出てきます(できれば良い色に焼けていて欲しいものですね)。

次にあなたは何を思ったか別のパンを手に取って隣の家を訪問し、その家のトースターにパンを入れて同じレベル4に設定し、パンを焼きました。

ここで質問です。あなたはこの二つのパンが同じ色に焼きあがっていると思いますか?

多分同じ焼き色にはなっていないでしょう。

なぜならば、トースターにおいて使用される焼き加減の設定は、そのトースターを基準として、どの位の強さでパンを焼くかの設定であって、必ずしも同じ焼き色を作成するとは限らないからです。

これはまさにカラーマネジメントの問題と同じであり、このトースターの設定の様に、コンピュータ上のRGBやCMYKの値も実はまた「単なる設定」にしか過ぎないのです。

トースターの違いで焼き色が変わるのと同じ様に、異なるデバイスに送られたRGBやCMYKの値は「単なる設定」として扱われ、異なるカラーを作成してしまうのです!

では、もしもあなたが、シビアなトーストマニアで、トースターの中のいろいろな設定で10枚のパンを各1枚ずつ、 焼き始めたとしましょう。

そしてそれらをキッチンのテーブルにきちんと並べて、次にパンの袋を握り締めて隣の家に向かいます。

隣の人の当惑した眼差しをよそに、あなたは10枚のトーストを彼のトースターで焼き上げると、それを持ち帰ってきて、さきほど焼いたトーストの横に並べていきました。

そしてトーストガイドブックに掲載されているあなたが気に入っている焼き色「B」を参考に、あなたの家ののトースターでこの焼き色を得るには、どのレベルが最適なのかを調べました。

すると「レベル4」のダイヤルで最も好ましい焼き色を得られることが分りました。

同じように隣で焼いて持ち帰ったパンを調べたところ、隣の家のトースターでは、「レベル6」のダイヤルで、その焼き色を得られる事が分りました。

極端な話、これがカラーマネジメントの本質です。

カラーマネジメントの基本は、あるデバイス(モニタやプリンタ等)が作成する色を注意深くサンプリングし、見本となる第三者のカラーガイドと比較することで、両者の接点を見極めてそれぞれをマッチングすることです。

トーストの場合は見本として仮想のトーストガイドブックを使用しましたが、コンピュータの場合、通常はLabカラースペースを使用します。

話は少し脱線してしまいますが、Labカラースペースの説明を簡単にしておきましょう。

Labとは色を3つの座標に渡って立体的に定義したものです。

各Labの数値(たとえば50, 23, 47)は、あるサンプル色が5000K光源下、あるいは「平均的人間」にとって、ある一定の距離からどの様に見えるのかを表したものです。

1931年に200人以上の科学者のグループが、この「平均的人間」を定義するべく骨身を惜しまずカラーテストを行ない、得られた結果を元にLabは策定されました。

トースターの話に戻りましょう。

異なるトースターで同じ焼き色を得るためには、普通のトースターで作成できるトーストのカラーを全てサンプリングして、それをガイドブックと比較する必要があります。

この参照テーブルはICCプロファイルに当るものです。

異なるデバイスから同じ色を得るためには、そのデバイスが作成可能なできるだけ多くの色をサンプリングして、デバイス間(例えばモニター)の色空間を変換するための変換テーブルを作成する必要があります。

モニターにおいては、まず測定器をモニターに装着し、赤(255, 0, 0)、黄(255, 255, 0)、緑(0, 255, 0)など現在表示されている色をチェックするソフトウェアを利用します。

そして得られた値をいったんLabカラーに変換し、最後にコンピュータによる演算処理を行ってモニターのプロファイルを作成します。

プリンターの場合も同様で、同じカラーを得たい場合、そのプリンタのプロファイルを作成する必要があります。これには同じ技術が用いられます。

私たちはプリンタに長い設定のリストを持つファイルを送り込みます(たとえば、シアン(100, 0, 0, 0)、紺に近い青(100, 100, 0, 0)、マゼンタ(0, 100, 0, 0) 、など)。

そして、i1の様な測定器で紙上の各パッチを測色し、得られたLab値を元にそのプリンタのプロファイルを作成します。

ここで「やった!これで終わりだ!」と思うかもしれませんが、実際にはこれで終わりではありません。

これらをどうやって使用しますか?それはあなたがやりたいことにかかっていいます。

一例として、画面上で見ている画像ファイルの色と一致した印刷結果を得たいとします。

この場合、モニターのRGB色域内に展開されている画面上の画像ファイルの色をプリンタCMYKの色域内に変換する必要があります。

モニターのプロファイルを参照することにより、そのモニターがどんな色特性を持っているかという事が分かり、プリンターのプロファイルのプロファイルを参照することで、そのプリンタがどんな色特性を持っているかが分かります。

そして、その両者の中間にLab色空間を基準とした見本を置くことで正しく色の変換を行うことができるのです(前述のトースターを思い出してください)。

話を分かりやすくするために、簡略化した部分やふさわしくない表現もあるかもしれませんが、カラーマネジメントの概念はこういった物です。